生活保護以外の公的支援制度

生活困窮者自立支援制度【生活保護と合わせて理解しておきたい制度】

日本では生活保護以外の生活困窮救済制度の知名度が低いのですが、もちろん生活保護以外の制度もあります。今回は生活困窮者自立支援制度について紹介します。

生活困窮者自立支援制度では、生活に困窮している方に対して、仕事、社会参加、家計管理など、様々な不安を解消する支援をします。

どうしてこの生活困窮者自立支援制度と生活保護を関連付けて理解しておくべきか、理由は2つあります。

まず1点目は、生活保護を利用する手前の段階で利用できる制度であるからです。生活保護は最後のセーフティネットなので、利用できる人というのはもう後が無い状況に追い込まれています。ですが、後が無い状況まで至らなくても、もう少しで後が無くなるという一歩、二歩手前くらいの段階で支援があれば安心ですよね?

そして2点目は『生活困窮者自立支援制度の枠組みでどうにもならなくなったら、生活保護に移行できる』からです。生活保護を利用するには2ルートあり、片方は自発的な申請、もう片方は他人からのアドバイスによる申請です。自分で生活保護という考えが無くても他人が生活保護を利用しろと勧めたり、利用手続きに付き添ってくれたなど、他人ありきで生活保護を申請した方は一定数います。生活困窮者自立支援制度に乗っておけば、客観的な視点から「生活保護を利用しましょう」となる可能性があります。

ということで、前置きが長くなりましたが、いざ困窮した時の備えとして、生活困窮者自立支援制度の中身について見て行きましょう。

目次
生活困窮者自立支援制度の概要
生活困窮者自立支援制度の具体的内容
・自立相談支援事業
・住居確保給付金の支給
・就労準備支援事業
・家計改善支援事業
・就労訓練事業
・生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業
・一時生活支援事業
生活困窮者自立支援制度の現況
生活困窮者自立支援制度と生活保護

生活困窮者自立支援制度の概要

生活困窮者自立支援制度とは、生活困窮者自立支援法に基づいて平成27年から運用されている制度です。生活保護と比べて知名度、実績ともにまだまだですが、利用した人の生活を改善させた実績もきちんとあります。

厚生労働省HPから情報を引用しています。

厚生労働省 生活困窮者自立支援制度 制度の紹介

支援の中身は

・自立相談支援事業
・住居確保給付金の支給
・就労準備支援事業
・家計改善支援事業
・就労訓練事業
・生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業
・一時生活支援事業

に分かれています。
市区町村によって、全ての事業をやっていたり、一部の事業のみを行っていたり差異があります。一部市区町村でのみ行っている事業は、家計改善支援事業、就労準備支援事業、生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業、一時生活支援事業です。自立相談支援事業、住居確保給付金の支給、就労訓練事業は、市区町村に関わらず実施されています。

先に例を出しますが、具体的にお住いの市区町村のHPから制度内容を確認した方が早いです。一例を紹介しておきます。

武蔵野市 生活困窮者自立支援制度

松戸市 生活困窮者自立支援制度

堺市社会福祉協議会(生活困窮者自立支援制度の窓口)

このように
『○○市 生活困窮者自立支援制度』
などで検索してみて下さい。

生活困窮者自立支援制度の具体的内容

生活困窮者自立支援制度には、大きく分けて7つの柱があります。それぞれを深く掘り下げていきます。

自立相談支援事業

まずは生活を立て直すにはどうすれば良いか相談します。生活が困窮しているというのは、ご自身で生活を改善するための方法を考えきれない、考える余裕が無い方もいます。そんな方は遠慮なく公的機関の手を借りてしまいましょう。第三者の視点があれば、解決方法が浮かんでくるかもしれません。

住居確保給付金の支給

就職に向けた活動をする、就労意欲があることを条件に、一定期間家賃相当額を『支給』します。収入や保有資産などの条件がありますが、支給されるというのは心の安定的な支えになるはずです。

就労準備支援事業

いずれは就労して自立、というのが望ましいのでしょうが、人によってはそうもいかないかと思います。就労以前に社会に出る準備段階として、就労してもやっていけるだけの基礎能力を身に着けたり、社会で活動する不安にはどう対応すればよいかを考えたりします。具体的には定期的な面談、ボランティア活動、協力事業所での作業体験などです。

家計改善支援事業

家計管理を通してついて、困窮している原因を考えていきます。多重債務を抱えている場合などは、根本的にどう解決するのが良いか、専門機関も交えて支援策を考えます。

就労訓練事業

一般就労することが難しい方へ、就労体験や支援付き雇用を実施します。就労準備支援事業と比べ、就労を体験する内容になっています。

生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業

学習塾、あるいは居場所作りの場となります。所得制限があり、収入の少ない困窮世帯、収入が少なめで育児に多くの時間を割けない片親世帯、生活保護世帯が利用できます。

一時生活支援事業

住居が無いという状態の方に、一定期間の宿泊場所を提供します。一定期間経過後も見越して、就労支援や生活保護に移行するのが妥当かどうかなど、その後の生活基盤も考えます。

生活困窮者自立支援制度の現況

生活困窮者自立支援制度について
令和元年度の相談件数などが公表されています。
相談件数は248,398件です。

生活困窮者自立支援制度における支援状況調査 集計結果

正直、困窮している人に対して相談した人が少ないと思います。平成27年に策定された制度で知名度が低いのが一因なので、まだまだ周知が必要です。

生活困窮者自立支援制度と生活保護

生活困窮者自立支援制度は、生活保護の前段階で生活に困窮する人を支えるセーフティネットとして存在します。そのため、生活困窮者自立支援制度の範囲では支えきることが出来ないとなれば、生活保護に移行することになります。これは非常に重要で『生活困窮者自立支援制度を利用していたために、生活保護にひっかかった』という事例も生まれることになります。ですので、生活に困窮していると感じたら、さっさと生活困窮者自立支援制度の窓口を叩きましょう。

例えば、年金受給者の年金だけが収入となっている親と子供世帯を挙げた7040、8050問題の当事者など、自力でどうにもならず、将来的に生活保護の利用も視野に入る方が居ます。年金がなくなったら、将来は生活保護があると思っているかもしれませんね。ですが、いざ親世代が亡くなった時に、すぐに生活保護のレールに乗ることはできるでしょうか?そんな状況に置かれている方は生活困窮者自立支援制度を利用することで、速やかに支援のセーフティネットに乗っかることが大切です。

以上、生活困窮者自立支援制度の紹介でした。もしもの時のために、このような支援があるということも覚えておきましょう。

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