生活保護利用者の悩みや気持ち【小田原市生活保護利用者アンケート調査結果より】
生活保護を実際に利用する方が抱えている悩みや不安は、どういうものがあるのか気にならないでしょうか? 小田原市と言う自治体が、生活保護について利用者に様々なアンケートを取り、結果を公開しています。
アンケートの中身は小田原市の生活保護に関するものが多くあります。それだけに限らず、生活保護利用者の抱えている悩みや不安についてもまとまっています。
さて、小田原市の生活保護といえば、職員の方が「保護舐めんな」ジャンパーを着ていたことで一躍有名になりました。
この事件のきっかけは、生活保護を廃止された人が刃物を持って、職員2人を切りつけたことから始まります。それに対して、職員の中で「保護舐めんな」ジャンパーを付けて業務を行う方がいたという話です。
ジャンパーを付けていれば、この人がケースワーカーで、その人と話しているのは生活保護利用者だと丸わかりですね。生活保護利用者に対しては残酷で不適切だなと思います。一方で一人の労働者視点で見ると、「保護舐めんな」ジャンパーを用意する気持ちも凄く分かります。
「保護舐めんな」ジャンパーの話は本題ではないのでさておき、アンケート結果を見て行きましょう。因みにこのアンケートは、「保護舐めんな」ジャンパーの件をきっかけとした、生活保護業務の改善策の一環として行われています。
・生活保護の情報をどう知ったか
生活保護の利用に至るには、そもそも生活保護という情報を知らなければ話になりません。「生活保護の情報をどのように知りましたか?」と言う質問があります。
家族、親族 17%
知人、友人 34%
市のHPや広報 7%
インターネット 1%
市の他の窓口からの案内 8%
その他 25%
不明 7%
となっています。
生活保護の利用者は半数が高齢者なのですが、情報源としてインターネットはあまり利用されていません。当サイトの存在意義を否定する形になりますが、大多数の方は家族や知人から生活保護について知り、そのまま生活保護の利用に至るという状況があります。
逆に言うと、人付き合いが少ない方は、生活保護の情報源は足りているのでしょうか。人付き合いがあまり無い方は、生活保護が必要な状況になったら生活保護を適切に利用できているのか、心配になります。
・生活保護利用者の悩みや不安
生活保護でどのような悩みや不安があるか、解決できれば人生も好転できそうです。「悩みや不安を感じているのはどのようなことについてですか?」という質問があります。ちなみにこれは複数回答です。回答の多いものを抜粋します。
自分の健康について 27%
老後の生活設計について 15%
今後の収入の見通しについて 14%
現在の収入について 11%
家族の健康について 8%
という回答が、目立っています。
因みに当調査の回答者、68%が60歳以上です。そして、65歳未満と答えた回答数は368です。老後の生活設計について悩みや不安を抱えていると答えた回答数は360です。つまり、65歳未満で生活保護を利用しているほとんどの方が、老後について不安を抱えていると言っても良いです。
これは至極当然で、生活保護を利用する期間が何年か続けば、その期間の年金反映額は抑えられたものになります。生活保護期間中は、国民年金の支払い免除申請を行うことで、国民年金を支払わなくても少しだけ年金額が加算されます。国民年金を払った場合の半額という本当に少しの加算です。
これで老後は年金で生活できるかと言えば、年金だけでは生活していけません。
働き、早めに厚生年金に加入する以外の解決方法は無いに等しく、老後もそのまま生活保護を利用することになります。逆に言えば、老後もずっと生活保護だと割り切ればそれまでの悩みです。
逆に高齢者の方の悩みとしては、自身や家族の健康があると思います。高齢者に限らず、病気や障害などで生活保護に至った方も合わせて、自身の健康は非常に気になる項目です。
・生活保護を利用する側の気持ち
生活保護を利用している方の気持ちを汲み取る質問もあります。
「過去30日間において、絶望的だと感じましたか?」と言う質問には
まったくない 20%
すこしだけ 26%
ときどき 25%
たいてい 5%
いつも 10%
となっています。
あわせて、「過去30日間において、自分は価値の無い人間だと感じましたか?」と言う質問には
まったくない 21%
すこしだけ 24%
ときどき 21%
たいてい 6%
いつも 16%
となっています。
なかなか厳しい結果が出ています。
この調査は、特に精神疾患を抱えた方ばかりを集めた調査というわけでもありません。生活保護を利用して生きていく中で、健全でいられることは案外難しいんじゃないかと言う現実がありそうです。これは自己肯定感の問題だと思うので、金銭的な支援だけではなく、生活保護制度として自己肯定感を高められる取り組みが必要ではないかと思います。
・小田原市の生活保護のしおり
生活保護についてではなく、ただの小田原市の取り組みですが、少し紹介します
生活保護のしおりというものがありますが、小田原市は分かりやすく見直しを行いました。25%の方が生活保護のしおりが分かりやすくなったと答えており、それなりに評価されています。※この質問、実は以前のしおりを読んだことが無いと答えた方も22%いるので、分母は100ではなく78です。
私が利用していた東京都某区の生活保護のしおりと比べると、収入申告などの部分で分かりやすいように配慮がなされていると感じました。
生活保護のしおりは、市区町村によって中身が変わります。分かりやすい内容にするか、丁寧に説明した内容にするかは、市区町村次第です。生活保護のしおりを見ると、その市区町村がどれだけ生活保護利用者に寄り添ってるか、伺うことが出来ます。
このように、アンケートの結果から生活保護を利用している方のリアル、生活保護制度の抱える問題を推し量ることができます。