生活保護費は今後も生きられる限界まで下がり続ける理由【生活保護費の決まり方】
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生活保護費ですが、5年に1回の生活保護制度見直しでが現在実施されており、生活保護費がどの水準になるか気になるところですね。
現在は物価高ということもあり、生活保護費を上げてほしいと願う生活保護利用者の方も多くいらっしゃるでしょう。
2023年については、少なくとも生活保護費の減額は見送る方針のようです。
そんな状況ではありますが、物価高を考慮しても、その分生活保護費は上がることは現状あり得ません。
なぜなら、生活保護費の参考指標にしている低所得者層、中所得者の収入が、物価高に追いつくほど増えていないからです。
どうしてそれが生活保護費に関連するのかという理由と、生活保護費はどのように、どんな基準で決まっているかの仕組みを今回は解説します。
※具体的な生活保護費が知りたいという方は、このページで計算してみてください
目次
生活保護費の決まり方
生活保護費はなぜ今の計算方式になっているのか
生活保護費の決まり方
生活保護費を決めるにあたっては
①低所得層(下位10%)と同程度の生活ができるか
②中所得層(平均)の7割程の生活費が確保できるか
の、2つの基準があります
厚生労働省の社会保障審議会(生活保護基準部会)では、そんな指標を用いながら話が進められています。
①については、
所得の下位10%人が、例えば月10万円使っているなら
生活保護費として10万円使えるようにしましょうという基準です。
②については、
所得を並べて中間の人が、例えば月20万円使っているなら
生活保護費として7割の14万円使えるようにしましょうという基準です。
要するに、生活保護費は、基準となる人が生活費幾らで暮らしているかを大きく参考にして決定されます。
つまり、「生活するのに幾ら必要か」ではなく、「他の人が幾らで生活しているか」というある意味自分ではどうにもならない基準に左右されるということです。
それを踏まえて昨今のような物価高になれば、どうなるかを考えてみましょう。
当たり前ですが、給与所得者は決まった生活費の中で生活します。
例えば、ある中間層の方が使えるお金が月に20万円だとしましょう。
物価高で、食費が月1万円増えたとします。
だったら娯楽費を月1万円減らして、変わらず月20万円で生活します。
食費が1万円増えたからと言って出費をそのまま1万円増やすなんてことはしません。
同様に、ある低所得層の方が使えるお金が家賃を除き月に7万円だとしましょう。
物価高で、光熱費が月3千円増えたとします。
だったら外食費や食費を月3千円減らして、変わらず月7万円で生活します。
人によっては月に数千円の貯金を諦めて出費に回すかもしれませんが、物価高全部について律儀に出費を増やすわけはなく、節約できるものは節約するでしょう。
使えるお金が変わらない以上、出費の振り分け方を変えるしかないですからね。
もうお分かりかと思いますが、たとえ物価高でも、多くの方は節約に走るのでトータルの出費はあまり変わりません。
物価が5%増えました、となると、出費に反映させるのは2~3%というところではないでしょうか。
なので、仮に物価高を生活保護費に反映させるとしても、増加分の半分くらいがいいところでしょう。
生活保護費が上がってほしいならば、低所得層や中間層の所得増加に期待するしかない、というのが生活保護制度の構造になっています。
生活保護費はなぜ今の計算方式になっているのか
生活保護費が決まるシステムについて、どうしてこんな仕組みになっているか、
現在の方式では、他の方の生活費に左右され、本当に必要な金額を割ってしまうのでは?という疑問が生まれるかもしれませんね。
この計算方法では、仮に低所得層が食費すらも満足に賄えなくなると、それに合わせて生活保護費も食費すら満足に賄えない水準になります。
このまま物価の上昇に対して生活保護費が追い付かなくなれば話は変わりますが、現行制度は、生活保護利用者に社会的、文化的な生活を送ってもらうために設計されています。
昭和20年代初期の生活保護費は、生活に必要な品物、お米や食材、光熱費などの生活必需品の金額を求め、生活保護費が幾らあれば1か月分購入することができるかという決め方をしていました。
これでは本当に最低限の決められたことにお金を使い、生きていくだけしか出来なくなりますね。
お金の使い道は自分で使いたい、最低限の娯楽も認められないのかという声も当然ありました。
そこで、一般世帯を指標にして、低所得層が持てる程度の生活の余裕を生活保護世帯も持てるように、方針変更しました。
現在、生活保護利用者が単身者の場合は家賃を除いて6~8万円の生活保護費を受け取り、食費に2~3万円、光熱通信費や日用品に3万円、残り1~2万円は好きに使う、という方が多いです。
この生活が成り立っているのは生活保護費を低所得層や中所得層の水準を指標にする方式によるものであります。
仮に生活保護制度創設時の基準に帰ると、食費に2~3万円、光熱通信費や日用品に3万円なら、生活保護費は家賃を除いて5~6万円となります。
現行の生活保護制度に対して、少なすぎる、これでは生きていけないと主張する方も見受けられますが、では生きていける最低限を保証する水準に直していいのかという議論になるでしょう
今そのやり方を取り入れるとなると、生活保護費はもっと下がりますね
とはいえ、日本全体の生活水準が下がり、現在の計算式では娯楽にお金を回さなくても食費すら確保できないとなると、これではまずいという話になり、最低限の食費や光熱通信費だけは保証する方式に戻すのではないでしょうか。
時代とともに変わっていくのも生活保護制度です。