生活保護受給者の食費【生活保護受給者がひもじい思いをしているのは本当なのか】
生活保護世帯は苦しいという記事を見かけることは無いでしょうか。特に食生活において「食事は1日に1食か2食」「1食あたり食パンを1枚」など、切迫した報告を見かけたことは無いでしょうか。
そして生活保護世帯は本当にそんな食生活をしているのか、気になったことは無いでしょうか。現在の生活保護制度は、はたしてそんな食生活をしなければいけないほど苦しいのでしょうか。そこで今回は、生活保護世帯が食費にかけている金額を、統計データを基に平均的な値を見て行きます。
因みに私個人は、生活保護時代にそこまで苦しい経験はしていません。
生活保護下での食生活と食費
生活保護利用者が食費にかけている金額は、場所によって違います。
2019年度社会保障生計調査という、生活保護利用者を対象とした家計調査があります。これで、生活保護利用者が実際に食費にかけている金額を見てみましょう。
1給地-1(都心部)では3万2千円です。
3給地ー2(田舎)では2万5千円です。
これで問題なく食事をしていけるのかどうかについては、1給地-1の3万円越えであれば余裕でやっていけますが、3給地ー2の田舎であれば工夫が必須です。
自炊に慣れた方なら朝食100~200円、昼食300円、夕食400円かけても月27000円で、普通に達成できます。つまり都心部なら余裕、田舎ではこの配分では難しいです。また、自炊に不慣れであったり外食が多い方にとっては、3万円を割ることについても達成しにくい金額ではないかと思います。結論は後でも述べますが、田舎の生活保護世帯においては、本当にギリギリの食生活をしている場合もあります。
そして都心部と田舎において、食費にかける金額には7千円の差がありますが、生活保護について詳しくなければなぜそうなるか意味が分からない現象かもしれません。その理由も見て行きましょう。
・理由①田舎では飲食店があまり無いので外食頻度も少ない
これはなんとなく想像つくかと思います。田舎においてはそもそも行こうと思えるお店もあまり無いので、都心部よりも外食頻度は減ります。
・理由②田舎では単純に食費に回す余裕がない
実は生活保護費は住んでいる地域によって異なります。都心部と田舎においては1万円以上の差になります。物価の違いなどを考慮、と言う理由です。
実際にそんな物価の違いはありません。私は電車が1時間に1~2本、23時で終電が無くなる地域にも、東京都内山手線内側にも住んだことがありますが、どちらもスーパーで買える食料品、ドラッグストアで買える日用品に大した値段の違いはありませんでした。加えて、田舎では光熱費が高くつくので、家賃以外の部分に目を向けると実は田舎の方が生活費がかかるというのがあります。生活保護において家賃は補填されるので、実は家賃の差を考慮する必要はありません。つまり、田舎では生活保護費が少ない分、それだけ家計が苦しくなります。
という状況を鑑みると、田舎で生活保護を利用すると都心部より1万円以上も余裕がなくなります。食費を7千円ほど抑えようとなるのも納得いくのではないでしょうか。
私もそこまで悲惨な経験はしていないと述べましたが、 都心部で生活保護を受給していました。生活保護での暮らしぶりについては、都心部か田舎かという点も考慮する必要があります。
さすがに国もこれはそのうち叩かれると思ったらしく、ここ10年において都心部の生活保護費は減額が続いていますが、実は田舎の生活保護費は増額されています。2010年ごろを見ると、都心と田舎で2万円ほど生活保護費に差があり、現状もまだ差はあるものの差は縮まったと言えます。
・理由③都会では外食費が高い
ちょっとだけ生活保護費の違いを正当化すると、外食に限れば、都心部の方が高くなります。田舎で600円くらいのラーメンが都心部では1000円くらいというのはよくある光景です。週に1回外食し、その差額が500円であれば、月に2000円の差額になります。
単身者の食費平均
生活保護の場合だけを取り上げてもイメージしにくいかと思いますので、生活保護に限らない単身者全体の食費も見てみましょう。
単身世帯において、1ヶ月の食費は40331円(外食含む)です。1日当たり1300円使っていることになります。
これは、非常に余裕のある人や普通の人、困窮している人をひとまとめにした統計です。非常に余裕のある生活をしている人が、平均を押し上げているので、実態はもう少し少な目(3万円台後半)と見ておくと見当外れにならないかと思います。
また、生活保護世帯において働いている人の割合は高くありません。働いている人に比べて仕事の合間の食事を用意する必要も少なく、時間に余裕があると言う事情もあります。と考えると、生活保護利用者の食生活も、そうでない人と大差はありません。
ただ、生活保護とそうでない人で食費にかけられるお金が1万円ほど変わってくるのも事実です。1万円程の違いがあれば、食材にこだわる余裕が生まれます。
例えば
・外国産の豚肉と国産の豚肉
・沖縄産パイナップルと外国産パイナップル
・みりん風調味料と本みりん
・バターとマーガリン
このあたり、本当にカツカツの状況であれば迷わず安い方を選ぶと思いますが、余裕があれば自分の好みで選べます。
また、月に1万円の違いは、1日に直すと300円です。300円あれば、昼食か夕食におかずを1品追加したり、デザートを付け足す余裕が生まれます。
以上、生活保護世帯の平均的な食費は少なくとも2万5千円、多くて3万円以上です。月に3万円使えれば、生活保護でない人に比べて食材を選ぶ余裕はなく、おかずを1品少なくする場合もあるものの、1食抜くほど悲惨でもありません。
月に2万5千円しか使わないなら、時には1食抜いて1日2食にすることもやむ無しかもしれません。人によってはひもじく、悲惨と言っても良いと思います。