2021年度の住民税非課税世帯向け10万円給付は生活保護世帯でも対象になるのか
2021年11月現在、新型コロナウィルスで揺らいだ国民の生活支援を目的として、住民税非課税世帯に対して、1世帯当たり10万円を給付する方向で話が進んでいます。
これが実施された場合、生活保護受給者世帯にも当てはまるのか、給付対象となるのかどうか、現在生活保護を利用している方は非常に気になるところではないでしょうか。
前提条件の話ですが『生活保護法による扶助を受けている方は住民税非課税世帯』として扱われます。これだけを見れば、生活保護世帯も支給の対象となって何もおかしくなさそうです。
生活保護世帯を対象とする可能性と理由
12月10日の国会答弁にて岸田総理は、日本共産党田村智子議員の質問に対し
「生活保護世帯を含む住民税非課税世帯に10万円給付し、加えて給付分は収入認定から除外する方向で検討」と、回答しました。
もちろん確定事項ではありませんが、岸田総理個人の考えとしては、 生活保護世帯を含む住民税非課税世帯に10万円給付し、収入認定もしない方針であるということです。
生活保護世帯を対象としない可能性と理由
逆に『既に最低限の生活が保障されている生活保護世帯への給付は二重給付』という観点から、生活保護世帯は支給の対象外となってもおかしくありません。
2021年12月20日現在において、住民税非課税世帯向け給付を、生活保護世帯も対象に含めるか否か、政府や厚生労働省からの明言はされていません。先ほど岸田総理の発言を紹介しましたが、覆る可能性は大いにあります。そして、過去の事例を読み解いても、生活保護世帯が給付の対象となっても、ならなくてもおかしくありません。過去に似たような性格の給付が行われた際に、生活保護世帯を対象にした事例も、対象にしなかった事例もあるからです。
ここ10年ほどの過去の事例で、その時々の給付は生活保護に関してどう対応されたのか、参考として見て行きましょう。
2020年までに実施された給付金など
2020年はコロナということもあり、大規模な給付が行われました。他の年でも、生活に大きな影響が出ていれば給付が行われています。その際、生活保護世帯は対象となったりならなかったり、扱いも色々です。
・2020年の特別定額給付金
記憶に新しい、コロナ対策の給付金です。こちらは生活保護世帯でも対象になりました。
総務省のHPにも、生活保護か否かに関わらず支給対象とし、収入認定しない旨が記載されています。
なぜ生活保護世帯も対象となったかといえば、施策の目的がコロナ蔓延防止のための自粛等への対応や一致団結にあり、家計の補填以外の意味合いもあったためです。
・2020年のマイナポイント事業
マイナンバーカードの普及を目的とした、5000円相当のポイント還元事業です。
生活保護世帯でも対象になっています。(貰ったポイントは収入認定の対象とされませんでした)
現在検討されているマイナポイント事業最大2万円相当についても、生活保護世帯は対象となるかと思います。(少なくとも、2万円相当のうちの5千円分は2020年のマイナポイント事業と同じ運用なので、その時と同じ理屈で生活保護世帯でも貰えるはずです。この5千円分を既に貰っている方は、今回は貰えなさそうですが。)
・2020年のひとり親世帯臨時特別給付金
ひとり親世帯への支援を目的とした給付金です。ひとり親世帯臨時特別給付金は2階建てで、基本給付と追加給付がありました。
基本給付分については生活保護世帯でも対象になりました。基本給付は、休校やコロナ対策に関して、ひとり親の負担増加に対する給付であり、生活保護であるかどうかは関係ないためです。
追加給付分については生活保護世帯は対象外でした。追加給付はコロナによる減収への給付であるため、仮に生活保護利用者が減収にあっても、減収された分は生活保護費が増額されることで補填されたからです。
「ひとり親世帯臨時特別給付金」の生活保護制度上の取扱いについて
・平成28、平成29年臨時福祉給付金
平成26年に消費税が増税されたことを受けて、特に生活が苦しくなる住民税非課税者に対して支援をするための給付です。
この時、生活保護世帯は対象になりませんでした。消費税の増税に合わせて、生活保護費を見直し、生活保護費の増額で補填されたためです。消費税の増税分を既に生活保護費で補填されている以上、さらに臨時福祉給付金で補填することは二重給付につながります。
・2009年の定額給付金
生活支援と落ち込んだ経済の振興を目的とした1万2千円、もしくは2万円の給付です。収入認定の対象外とされました。経済の振興を目的とするのであれば、生活保護利用者も含めた方が効果は大きいでしょう。
生活保護世帯が給付の対象となるかは給付金の目的次第
このように、給付金について過去を遡って見ると、生活保護でも給付の対象となるかならないかは、どちらに転んでもおかしくないことが分かります。ただ、どちらに転ぶかは、給付金実施時の施策目的次第だったと言えます。
給付金が純粋に家計の補填を目的とした場合であれば、生活保護世帯は既に生活保護費で最低限の生活が保障されているため、対象とはなりません。経済振興や慰労など、給付金に家計の補填以外の目的を掲げるのであれば、生活保護世帯への差別とならないよう、また掲げた目的の成果を出すために、生活保護世帯も支援の対象となります。
どちらに転んでもおかしくないと言いましたが、直近の2020年の定額給付金対応から考えると、生活保護世帯は今回の住民税非課税世帯向け10万円給付の対象となりそうだなと思います。 いずれにせよ未確定事項なので、今後の動向、特に給付金の目的として何を掲げるのかは注意して見て行きましょう。
また、合わせて話が進んでいる子育て世帯生活支援特別給付金についても、生活保護世帯が対象となるか(収入認定の対象としないか)の明言は未だにありません。 2020年のひとり親世帯臨時特別給付金の運用を考えれば、収入認定の対象とはならないだろうと見ていますが、正式に厚生労働省などから告知されるまでは当てにしないほうが良さそうです。