生活保護に関する考察

生活保護の不正受給率は高い?不正受給率とはそもそも何か

今回は、生活保護の不正受給率をテーマに
不正受給率とはそもそも何なのか?
どうやって求めた数字なのか?について
元生活保護受給者の私が説明します。

いきなりですが生活保護の不正受給
多いと思いますか?
少ないと思いますか?
それともよくわからないでしょうか?
生活保護の不正受給率は〇%という記事を読んだ際には
不正受給率について色々考えるかもしれないですね。

それを考える前に、
不正受給が多い、少ないの判断材料にしている
「生活保護の不正受給率」
とは結局どう求められた数字なのか、見ていきましょう。

伝えたいこと
『不正受給率は値を恣意的に操作できる数値です』

目次
・2017年度(平成29年度)の生活保護データ
・2017年度生活保護費の不正受給率計算
 金額割合
 世帯割合
・不正受給率のシミュレーション
・まとめ

・2017年度(平成29年度)の生活保護データ

2017年度(平成29年度)のデータになりますが
不正受給件数は39960件
不正受給金額では約155億円です。
生活保護の総額は3兆8400億円
生活保護の受給者数は2124631人
生活保護受給世帯は1640854世帯です。
この数字を元に、不正受給の割合を計算してみましょう。

・ 2017年度生活保護費の不正受給率計算

生活保護の不正受給率は
金額割合
受給世帯割合
どちらかの計算で求められることが多いです。
そして、この2つの値は意味が全然異なり
値も大きく変わってきます。

金額割合

生活保護費の総支給額のうち
不正受給された金額の割合です

2017年のデータを基に計算しますと

不正受給金額は約155億円
生活保護の総額は3兆8400億円なので

155億円÷3兆8400億円≒0.4%

生活保護費として支給された金額のうち
0.4%が不正に支給された生活保護費
ということになります。

受給世帯割合

生活保護受給世帯のうち
不正受給を行った世帯の割合です。

生活保護受給世帯は1640854世帯のうち
不正受給件数は39960件なので
39960件÷1640854世帯≒2.4%

生活保護受給世帯のうち
2.4%の世帯が不正に支給された生活保護費を得た
ということになります。

※注
この計算方法では
不正受給をする世帯が
不正受給をする件数は年に1件だけ
と言う前提になっていますので
実際の世帯ベースでの割合は
もう少し低くなります。
1世帯で年に2回以上不正受給をする
事例もあるためです。

・不正受給率のシミュレーション

このように
生活保護の不正受給率は
金額割合と受給世帯割合
どちらで見るかで
全く別の数字になります。
両者に非常に開きがあると思いませんでしたか?

このページをご覧いただいている
皆様の実感としましては
金額ベースよりも
生活保護受給者が〇人いて
そのうち●人が不正受給をしている
という、受給世帯割合こそが
不正受給の割合イメージではないでしょうか

たまに、この違いをごちゃまぜにして
不正受給者は生活保護のうち0.4%
としている記事を見かけます。

それはまだ良識がある方で
現在の生活保護の不正受給率を
意図的に低く言いたいときは金額割合(0.4%)で
意図的に高く言いたいときは世帯割合(2.4%)で
という、悪意溢れるダブルスタンダード使いもいます。
マスコミが良く利用する
都合のいい指標を使うというやつですね。

少しシミュレーションしてみましょう。

生活保護受給世帯が100万世帯だとします。
この全ての世帯が年間3万円を不正受給しました。
もちろん生活保護受給世帯の不正受給率は100%ですね。

このケースではトータルで
300億円が不正受給されたことになります。
そして、生活保護費は全世帯総額で6000億円支払われましたとします。
生活保護費に占める不正受給金額の割合は
300億円÷6000億円=0.05=5%
ということで、金額ベースでの不正受給率は5%です。

全く異なる不正受給率になりましたがどうでしょう?
これは非常に極端なシミュレーションですが
金額ベースでの不正受給率を取り上げて
「不正受給率は5%、不正はほとんどない」
と言われても
全世帯が不正受給しているのに
何が不正受給率5%だふざけんな
と思う方が多数ではないでしょうか。
少なくとも私はそう思います。

非常に極端な例で説明しましたがこのように
「金額ベースの不正受給率を
受給者の割合ベースでの不正受給率とすり替え
そんなに問題の無いようにさらっと紹介する」
そんな記事は山のようにあります。

逆に、
「不正受給率が100%?なら
不正受給を全部見つけて止めれば
生活保護費が全て削減できる」
と思いませんか?
しかし、実際に不正受給を全て止めても
あれ?5%しか生活保護費が削減されない。
ということにもなります。

不正受給率を求める際の
金額割合と受給世帯割合は
全く別の指標だとお判りいただけたかと思います。

まとめ

生活保護の不正受給率について
ふと疑問に思いましたので
考えをまとめてみました。

このページをご覧の
少なからず生活保護に関心をお持ちの皆様は
不正受給率について
高い、高くないの話をする機会があるかもしれませんが
そもそもの不正受給率についての定義、認識を
相手と合わせましょう。
また、不正受給率についての記事を読む際は
計算方法を確認して
自分のイメージしたものと合っているか
確認しましょう。
こうすれば、相手の言っていることを
鵜呑みにすることなく
モヤモヤすることもないと思います。

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