生活保護からの脱出

生活保護の再受給率【生活保護から自立・脱出できる人の割合は3%】

生活保護を抜け出したとしても、再度生活保護を利用することになる可能性があります。そう考えると、生活保護を抜け出すモチベーションが下がってしまうかもしれませんね。気持ちはわかりますが、生活保護の再利用はじっさいどれくらいあり得る話なのでしょうか?その確率・割合を計算して解説します。

逆に言えば、これから生活保護を抜け出せる可能性はどれだけあるのかも分かります。他のブログやサイトなどには『生活保護から自立できる人の割合は1%』という意見も出ています。本当に、生活保護を抜け出して自立するのは難しいのか見て行きましょう。

まずは、1年あたり生活保護を抜け出した世帯がどれだけあるか見てみましょう。平成30年度の保護廃止世帯数、保護廃止理由の統計としてまとめたものがあります。
平成30年度被保護者調査
このリンクの『保護廃止世帯数,世帯類型、世帯構造×保護廃止の理由別,月・1か月平均』からデータを引用しています。

このデータから、平成30年度の保護廃止世帯数は169,279世帯です。

この数字は生活保護が廃止になった世帯数ですが、全世帯がちゃんと生活保護を抜け出したわけではありません。ここから「死亡」「失踪」によって生活保護が廃止になった世帯、つまり生活保護を利用したまま消えることになった世帯を除外します。死亡によって生活保護が廃止になった世帯は70,268、そして失踪によって生活保護が廃止になった世帯は10,458です。169,279世帯のうち、これらを除外した残りの88,553世帯が、生活保護を抜け出してこれから自力で人生を切り開いていくことになった世帯です。

次に、生活保護を利用することになった方のうち、過去に生活保護を利用していたかどうかの統計があります。先ほどのリンクの『保護歴有保護開始世帯数,前回廃止時からの期間×保護開始の理由別,月・1か月平均』からデータを引用しています。

平成30年度の生活保護再利用世帯数は42,595世帯です。

これを基に、生活保護を抜け出す世帯数が年度によって変わらないというきわめて乱暴な前提で計算をします。計算ですが、88,553世帯が生活保護から抜け出したと同時に、42,595世帯の生活保護利用歴のある世帯が改めて生活保護を利用しています。42,595÷88,553=0.481となり、48%です。

生活保護を利用していた方が、再度生活保護を利用する可能性は5割弱と言えます。生活保護を1回受給していた時点で貯蓄、稼げる仕事、親戚の援助、十分な年金がないということなので、生活保護の再利用率が高いことも納得できます。

ですが逆に言うと、残りの5割、45,958世帯の方は、生活保護から抜け出したらそれっきり、生活保護を利用することなく自立します。

平成31年度時点で全体の生活保護世帯が164万世帯ですので、そのうちそこから自立・脱出しているのは45,958世帯とすると、生活保護から完全に自立できるのはおよそ2.8%、3%にも満たない数字になります。

色々なブログやサイトを見てみて、『生活保護から自立できる人の割合は1%』という話もありましたが、1%程でないにしろ、現実は厳しいと思います。ただ、1%というのも根拠のない適当な数字ということがはっきりしました。こういう情報を発信するならせめて自分で計算をして根拠を示して欲しいところです。

ここからは、どうして生活保護を抜け出したのに再度生活保護を利用することになる人がそれなりの割合でいるのかをお話しします。

生活保護を抜け出すことになった理由に目を向けてみましょう。生活保護を抜け出すことになった理由は、収入や年金の増加などがあります。そして、「その他」の割合が4万世帯ほど、全体の4分の1を占めるのですが、多すぎると思いませんか?

これは親戚が亡くなり遺産が入った、貯金額が余りに多くなったので生活保護を一時抜けることになった、という理由も含めます。将来的に自分で稼ぐ力があるとは言えないものの、今現在困窮しないだけのお金があれば、生活保護は廃止になります。要するに、本人に稼ぐ力はなく、将来的に生活保護を再び利用することになるのは福祉事務所も理解したうえで、とりあえず生活保護を廃止にしたパターンです。

逆に言うと、自力で稼ぐ力を身に着け生活保護を抜け出した方は、再度生活保護を利用する可能性は低いと思います。世間一般には、生活保護を抜け出せてもまた生活保護を利用しない人は本当に少ない…と言われています。確かに稼ぐ力を身に着けられないまま生活保護を抜け出したなら、将来も生活保護に返ることが約束されています。しかし、自力で生きていく最低限のお金を稼ぐ力を身につけられたなら、将来も割となんとかなります。

そして統計を見ればわかりますが、収入の増加によって生活保護を抜け出している方も1年で3万人います。生活保護を抜け出したいと頑張っている方は『生活保護を抜け出そうとして頑張っている方は自分以外にもいて、頑張って結果を出した人もいる』という確かな事実に目を向けてみて下さい。

世の中には『どうせ生活保護を抜けてもそのうちまた生活保護になる』と腐ってやる気を無くす方がいますが…別にそんな方に付き合う必要はありません。生活保護を抜け出したいと思ったら雑音には耳を貸さずに、抜け出すための行動をしましょう。

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