生活保護に関する考察

肥満と低所得の関係【生活保護なのに太っているのはおかしいのか】

『所得が少ない人は太りやすい』という話、聞いたことは無いでしょうか?例えば「生活保護なのに太っているのはおかしい」と言う話に対する「今は低所得程太ってしまう時代」という意見です。私もその話を聞き、本当かどうか気になりましたので、今回は所得と肥満の関係について調べてみました。

目次
低所得層ほど肥満になりやすい
低所得層ほど肥満になりやすいとは言えない
生活保護なのに太っているのはおかしいのか
欧米の低所得と肥満の関係
低所得者は不健康

低所得層ほど肥満になりやすい

低所得程肥満になりやすいというのは、適当な想像ではなく、データ付きで言われるようになりました。
統計資料としては次のようなものがあります。

厚生労働省平成22年国民健康・栄養調査結果の概要から引用
厚生労働省 平成26年国民健康・栄養調査結果の概要から引用

それぞれ、調査結果を引用させていただきました。平成22年度は女性において、平成26年度は男性、女性両方において、低所得程肥満の傾向が見られます。

所得が少ない人は太りやすいと、世間一般で言われている理由としては、低所得であれば食事にお金を掛けられず、安い炭水化物中心の食生活になりやすいという推測が挙げられています。肉や野菜に比べて、炭水化物は安くお腹を満たせるものが多いですね。

調査を見ても、高所得層ほど野菜摂取量が多いという結果が出ています。当然ですが、高所得程食費にお金を回せるので、栄養バランスを考えた食事が出来ます。

一応、所得と肥満の関係は筋が通っているように見えます。

低所得層ほど肥満になりやすいとは言えない

ここまでに低所得層ほど肥満になりやすいという傾向を確認できたかと思います。ただ、この調査は平成26年までのものです。現在分かる範囲で最新の年度については、どうなっているのかなと思ってですね、他の年度についても見てみました。

厚生労働省 平成30年国民健康・栄養調査結果の概要から引用

所得の低さと肥満に関連性が見られません。

この結果を見て不思議に思い、引用元を誤ったかもと何度も確認しましたが、そんなことはありませんでした。低所得に肥満が多いかと言えばそうではなく、女性に限れば逆に高所得に肥満が多くなっていますね。

ここまで述べたことは何だったのでしょうか。さらにはネット上でも所得の低さと肥満について多くの意見が確認できましたが、一体何を根拠にしている意見なのでしょうか。

低所得層は肥満が多いという認識でいましたが、この結果を見てひとまず改めることにしました。本記事のタイトルが疑問形で終わっているのもそういうことです。

平成26年から平成30年までの間に、色々な前提が変わっていたのかもしれません。

そもそも日本において、平均よりちょっと低い程度、例えば生活保護並みの所得水準では、必要な栄養を取れないほどの貧困にはなりません。自炊もせず、生活保護も利用しておらず年収100万円以下という状況でもなければ、炭水化物中心の食生活を強いられるほどお金に困る事態にはなりません。

というのは、普段スーパーに行く方なら分かるかと思いますが、豆腐や卵、鶏むね肉、もやしや旬の野菜など、肥満とは縁遠い食材がそれなりに安く買えますよね。自炊をしっかりとすることが前提になっていますが、1人当たり月に1万5千円もあれば十分まともな食生活が送れます。これは生活保護世帯でも実現でき、この水準を満たせないほど収入が少ないなら、生活保護を利用できるという話です。

ただ、タンパク質や野菜がしっかりと入った健康的な食生活を、自炊を行わずに達成しようとすると、もっとお金が必要です。1食につき千円前後、朝は適当でいいにしても昼と夜で月に60食、計6万円ほど欲しいところです。つまり年間に72万円欲しいところですが、こんな食生活は年収200万円と言わず、年収400万円、年収600万円あってもなかなかできないのではないでしょうか。それ以上のお金持ちならともかく、自炊を取り入れずに健康的な食生活を送るのは、所得に関わらずどの道難しいのではないでしょうか。

という日本の現状を考えると、肥満を招く食生活は、所得の問題と言い切れません。むしろ自炊習慣の有無の方が重要ではないでしょうか。自炊をきっちり行える時間の無い方、もしくは他の問題で自炊を出来ない方が肥満になりやすいのでは?と推測しました。

具体的には、仕事で忙しく自炊する時間が無かったりということです。また、病気療養中で自炊をすることが出来ないなどの事情です。その視点で考えるなら、高所得程忙しくて自炊する暇なく、肥満を招く食生活に走っているのかもしれないですね。ただこれも、平成30年のデータを基にした推測になります。

ということで、日本における所得と肥満の関係は、参考にするデータが年によって違いすぎてまだ結論を出せません。もう2回ほど同じような調査をして、低所得ほど肥満という傾向が見いだせれば、平成30年の調査結果は例外扱いとして、低所得が肥満の原因であると結論を出せます。それまでは、肥満は低所得による食生活が原因と、一概に決めつけるべきではないです。

生活保護なのに太っているのはおかしいのか

ここまでを踏まえて、生活保護なのに太っているのはおかしいという意見を考察してみましょう。当然ですが、生活保護なのに太っているのは○○という理由でおかしい、という○○の理由は1つではありません。

「(生活保護費でステーキみたいな贅沢食材を買いまくって太っているなら)生活保護なのに太っているのはおかしい」

これは、生活保護利用者が太れるほど贅沢しているのはおかしいという視点ですね。

過去にテレビにおいて、生活保護費が月に29万円、半額の和牛などを大量に買っている女性というのが放送されました。半額とは言え高級肉を買いこみ「生活保護費が少ない、生活保護費の減額に納得していない」と訴えるその姿は、視聴者に強烈な印象を残しました。高給取りのテレビ放送会社が、生活保護利用者の困窮を訴えられると思って放送したら、平均的な視聴者にとってはどうみても贅沢階級がわがままを訴えている姿に映ったという、生活保護史に残る屈指の放送事故です。こういう事例を知っている方は、生活保護利用者に対して、生活保護利用者=贅沢をしている人と思っているのかもしれません。

ただ、生活保護費が月に29万円以上になる方、そこから贅沢する方も極一部です。なにより、1000円するステーキなどよりも100円程度の菓子パンの方が栄養も無く太りやすく、健康とは程遠いというのがあります。つまり、生活保護受給者が、贅沢三昧出来るほど生活保護費を受け取っているというのは偏見です。なにより肥満は、贅沢品だけでなく安価に変える食材も原因になります。

「(生活保護費はそこそこの生活を送る程度の金額を貰えるし、肉や野菜だって普通に買えるのだから)生活保護なのに太っているのはおかしい」

これは自炊を中心に生活している方の視点になります。生活保護くらいの収入、例えば単身で手取りが12~13万あり自炊をする方にとっては、生活保護費を受け取っている方が肥満になるような食生活を送ることを不思議に思えるかもしれません。

ですが、自炊を出来ない方にとっては、栄養バランスの良い弁当などに月6万円程を食費として出せるわけもありません。そこで、安価な栄養バランス無視した弁当やカップ麺などを買うことになります。自炊すれば良いのですが、生活保護を利用している方の中には、自炊をしないのではなく、体調がすぐれずに自炊を出来ない方も居ます。ジャンクフードやお弁当でお腹を満たすのは自炊に比べて楽ですからね。

という感じで、生活保護利用者の肥満は別におかしくありません。収入が少なくても肥満につながる食生活は出来ますし、個々人の事情によって自炊が出来ない場合もあります。

欧米の低所得と肥満の関係

欧米でも、低所得と肥満の関係は指摘されています。データとしてもいくつか提示されていますが、その理屈を日本に持ち込む前に、日本と欧米の食品を取り巻く食環境の違いを取り上げてみましょう。

まずは、鶏むね肉と鶏もも肉の嗜好の違いです。日本では鶏むね肉が鶏もも肉より安く、鶏むね肉が100円であれば、同量の鶏もも肉が150円くらいになっています。欧米では逆に鶏もも肉が鶏むね肉より安く、鶏もも肉が100円であれば、同量の鶏むね肉が150円くらいになっています。油の少ない健康的な肉の方が良いという文化の違いによるものですね。なので欧米では所得の少ない方が鶏もも肉を買い、日本では所得の少ない方が鶏むね肉を買っています。因みにタンパク質の含有量に優れるのは鶏むね肉です。

また日本では、卵が国内の物価に対して相対的に安くなっています。所得が日本の半分以下の国と同じくらいの価格になっています。大声で言いにくいですが、日本の卵産業は鶏の幸福よりも利益を追求しています。狭いケージに鶏を押し込め、効率的に卵を生産するようになっています。私もこれについてどうと問われると、安い卵を買いたい派で卵が安いのは仕方ないよねと言う考えなので、どうこう言う気はありません。

さらにはもやしや豆腐など、栄養価や製造の手間から見てもどうしてこの価格に出来るのかわからない食品が存在します。豆腐なんていう高たんぱく食品は、欧米ではもっと評価されており、それなりの値段がついています。
一方日本では、豆腐は安いことが当たり前の商品として認識されていますね。

卵やもやし、鶏むね肉にも言えますが、日本において安い商品という評価を一度受けた商品は、ずっと安い商品である傾向があります。半面、牛肉などある程度高いのは仕方がないという商品は、どんどん値上がりしています。

ということで、日本は欧米に比べて高たんぱくな食品が相対的に安くなっている傾向があり、所得の少ない方が手を出しやすい食品というものが欧米とは異なっています。その前提を無視して、欧米では低所得と肥満が関連付けられるため、日本も当てはまると考えるのは早計と言えます。

低所得者は不健康

低所得と肥満の関係については、ひとまず保留としました。だからと言って低所得層が健康であるとは言えません。当然のように所得と健康は比例します。それを裏付けるデータはいくつもあり、所得と寿命が半比例する残酷なデータなどもあります。

低所得は不健康だと言える理由として、低所得ほど、健康診断を受けていないという点が挙げられます。これは、勤め先の健康診断を受診する機会は労働条件によるため、非正規雇用より正規雇用の方が健康診断を受診する機会に恵まれています。つまり所得の多さと健康診断を受診義務のある労働条件で働いている割合が比例するからです。

この傾向は年度が異なっても変わらず、世帯所得200万円未満層の健康診断未受診率は4割を超えています。その一方、世帯所得が上がるほど健康診断未受診率は下がっていきます。

健康診断を受診しないデメリットは説明するまでもありませんね。がんなど、早期発見できれば取り返しがついたものが、発見が遅くなることで寿命を縮めます。今を騒がせるコロナウィルスにおいても、基礎疾患があると重症化しやすいという話ですが、健康診断を受診しなければ基礎疾患にも気が付きません。

国民健康保険加入者向けの健康診断や、生活保護世帯など国民健康保険に加入していない方向けの健康診断もあります。健康診断を受診する機会に恵まれなかった方も、お住いの自治体の制度などを調べ、機会があれば受診しておきましょう。

合わせて、低所得程歯が少ないという事実もデータとして有ります。これは低所得程非正規雇用が多く、歯医者に行くと仕事を休むことになり、収入が減るので生きにくいという心理的理由が挙げられます。とはいえ、放置すると虫歯が進行し歯を抜くしかなくなりますね。私も例にもれず、歯がボロボロになって後悔しているので、歯を放置している方はさっさと行きましょう。

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