生活保護に関する考察

生活保護受給者は一般市民にどう思われているか【なぜバッシングされる?】

他の人から見たら生活保護受給者はどう思われているのか、気になってしまう方もいるのではないでしょうか?一般市民を対象に生活保護についてのアンケート調査を行ったものがありますので紹介します。その結果から、生活保護受給者がバッシングされる理由を解説します。

今回紹介する調査はこちらになります。2015年の調査ではありますが、現在と世論は大きく変わっていないと思います。※PDFがダウンロードされますのでご留意ください。生活保護制度に関する市民意識調査 – 日本福祉大学機関

今回はこの質問に対する回答の一部(4番と5番)を紹介します

目次
・生活保護受給者の30%が不正受給者と思われている
・生活保護費は受給者が実際貰う金額より多く貰っていると思われている
・まとめ

生活保護受給者の30%が不正受給者と思われている

現在、生活保護受給者世帯全体のうち、何%が不正受給をしていると思うか?という質問への回答です。

10~60%へ万遍無く票が入っています。まとめると生活保護受給者のうち、不正受給者は30%と思われています。

実際は世帯全体の2.4%が不正受給を行っています。さらに付け加えると不正受給の大半は、高校生の子供がアルバイトをしていたのを把握していなかったなどの、故意ではない不正受給です。予想と実態の乖離がとても大きいことが分かると思います。

生活保護受給者へのバッシングも、これで理由付けが出来ます。生活保護受給者の30%が不正受給をしている犯罪者、というのは割合としてはとんでもなく高いですからね。誤解に基づいた予想ですが、生活保護受給者を叩く原因としては理解できます。仮定の話をしますが、10代で親になった人のうち3割が子供を虐待する、という話になれば10代で親になった人はもれなく叩かれるんじゃないかと思います。他にも○○の3割が●●という話になれば、警戒したりするのではないでしょうか?3割というのは実感として非常に高い数値です。

とはいえ、この質問では不正受給とは何かが定義されていません。働けるのに生活保護費を貰っている、生活保護受給者なのにパチスロをしている、という人は別に不正受給ではありません。ですが制度を知らない方から見ればそんな方もひっくるめて不正受給をしている人としてみなされているかもしれません。

ということで、生活保護受給者=犯罪者、生活保護受給者=不正受給というのは実態からかけ離れた的外れなバッシングです。気にすることはありません。

ただこの結果からは、自分が生活保護受給者だと開示することはデメリットしかないことが分かります。少なくとも、自分が生活保護受給者であることを開示するのは、自分が不正受給などしないと思ってもらえる関係性を築けた相手だけにしましょう。何なら誰にも言う必要はありません。

因みに私は生活保護受給中、自分が生活保護受給者であることを開示した相手はいません。そしてこれからも開示するつもりもありません。

生活保護費は受給者が実際貰う金額より多く貰っていると思われている

次は、70歳の単身男性が受給する生活保護費は幾らで、理想は幾らだと思うか?という質問への回答です。

7~13万円の間に収まっている方を集めると、50%を超えます。実態は地域によって変わりますが、概ね8~12万円になりますので、実態通りの認識をしている方が多いです。

その一方で、実態よりも多く生活保護費を貰っていると認識している割合も一定数います。13~17万円と予想した方の割合は合計で2割強です。TVなどで紹介された29万円生活保護おばさんなど、高額の生活保護を受給している方のイメージがあり、それに引きずられているのでは?と思います。

生活保護費は生きていくのに十分な金額が貰えますが、そこまで多いか?と問われるとそれほどでもありません。私も月に12万円ほどでした。

が、これが2割ほどの方が予想する15万円程になるなら話は別です。毎日回転ずしに行く、月1で国内旅行に行く程度の贅沢が余裕で可能になります。ということで、そもそも生活保護費が贅沢できるほど多い(という誤解)が原因で、生活保護受給者は贅沢をしているというバッシングがあるのでは?と思いました。

ただ、現実より高めの予想額と理想額はほぼトントンなので、生活保護費が現状より多くなることを肯定している方も一定数居ることが分かります。現在の世論は「生活保護費貰いすぎ」ですが、実態が正しく伝わったら世論が変わるかもしれませんね。

まとめ

以上、調査の一部を紹介しました。生活保護制度への誤解と、それに基づく生活保護受給者への厳しい悪イメージが浮かび上がったと思います。生活保護受給者にとってはやってられないかもしれませんね。現実は厳しいですが、嘆いても仕方ないので、気にしないようにしましょう。
そして、事実に基づくバッシングであれば反省すべきではありますが、誤解に基づくバッシングであれば相手にする必要もありません。淡々と生きていきましょう。ただ事実として、生活保護に対する間違った認識とバッシングは存在することを、認識しておいた方が良いです。

2件のコメント

  • よくしるひと

    生活保護制度についてよく知る立場にある者です。
    他の記事も含めて、かなり良く勉強なさっていると思います。
    ただ、いくつか気になったのでコメントします。

    >> 実際は世帯全体の2.4%が不正受給を行っています。
    「2.4%が不正受給している」という表現は正確性に欠いていると思います。
    正確には、「福祉事務所は2.4%の不正受給を把握している」という表現が適切だと思います

    ちなみに体感では稼働年齢層に限ると、不正受給率は露見していないものも含めて30%程度はあると思いますが

    >>生活保護受給者なのにパチスロをしている、という人は別に不正受給ではありません。
    ここでいうパチスロとは、遊戯場で遊戯をし、そこで得た景品を近くの古物商で売買している形を想定されていると思いますが、古物商で景品を売却したことで得た金品についてはすべて福祉事務所へ申告しなければならず、ほとんどの受給者は申告していません。(実際に景品売却の現場を押さえることも多々あります)
    なお、遊戯に使った費用(投資)については必要経費として認められることはありません(パチスロを合法とするための理屈から)

    もし、景品交換までを想定していないのであれば、その旨及び古物商で景品を売却したことで得た金品についてはすべて福祉事務所へ申告しなければならないことも付記する方が情報の正確性が担保されると思います。

    • ぱんけーき

      よくしるひと様
      訪問とコメントによるご意見ありがとうございます。

      >>正確には、「福祉事務所は2.4%の不正受給を把握している」という表現が適切だと思います
      確かに、2.4%はあくまで福祉事務所が把握している値なので、ご指摘の通りです。

      体感的な不正受給率については裏付けがないので何も言えませんが、最近思っている1つの仮説があります。

      私の述べている「2.4%」というのは、あくまで1年間に区切って把握された値です。
      ですが、生活保護の利用が1年で終わるかと言うと、1年で抜ける方は少数ですよね。

      1年区切りだと、例えば2021年の12月に不正受給をしたAさんがいたとして、Aさんは2022年になったら不正受給者にカウントされないことになります。
      でも体感的にはAさんのことを当分の間、不正受給した方として認識するのではないでしょうか。
      年度が替わったからと言って、心情的にリセットできるものでは無いと思うので、ここに統計と体感の乖離が発生すると考えています。

      ということで、1年で区切らず3年間やもっと長期で見てみることで、さらに福祉事務所が把握していない不正受給も含めると、体感に近づくのではないかと思っております。
      また、2.4%は非稼働年齢層も含めた値なので、稼働年齢層に限定すれば大きな違いが出るかもしれませんね。

      パチスロについてもそこまで考慮して記載しておりませんでした。
      ご意見ありがとうございました。刺激になりました。

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