生活保護申請で扶養照会を拒否したいという気持ちはどこまで認められるのか
生活保護の申請には、申請者への援助が可能かどうかを問い合わせる扶養照会が関わってきますね。生活保護における扶養照会について、こんなネット記事がありました。
【実録】生活保護申請者の「扶養照会拒否の申出書」を受け取らず、照会を強行した杉並福祉事務所の冷酷
こちらの記事ををまとめると『生活保護の申請をする際、高齢の両親などの親族に知られたくないため、扶養照会を拒否する申出書を提出。すると職員に受け取りを強く拒否され「申出書をひっこめないと保護申請の手続きは進められない」とまで言われてしまった。』という要旨になります。
この話をする前に、現在は扶養照会がどう運用されることになっているのか、ルールを確認してみましょう。こちらでは、扶養照会をしなくて良い場合について、また、扶養照会をしてはいけない場合について説明しています。
扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について
令和3年3月30日付厚生労働省保護課長事務連絡
扶養照会をしてはいけない場合は、夫の暴力から逃れてきた母子や虐待等の経緯がある者等、自立を阻害すると認められる時となっています。当たり前ですね、扶養照会をした結果暴行事件など起きたらたまったものではありません。
扶養照会をしなくていい場合とは、明らかに扶養が期待できない時となっています。10年以上の音信不通や専業主婦・主夫、未成年者、概ね70歳以上の高齢者などになります。と言いつつ、運用レベルでは扶養照会しなくても良いとはなっていますが、してはいけないとはなっていません。福祉事務所のの判断に任されており、扶養照会しなくていい場合については、扶養照会してもしなくても、ルール上は問題ないです。特に厚労省から罰則があるわけでもありません。
これを踏まえて記事に戻ってみましょう。記事の件は、地方に住む両親は80代と高齢で、しかも二人ともに持病を抱えているので心配をかけたくないという理由で扶養照会を拒否したいと申立書を出しました。これは、扶養照会をしなくていい場合になります。紹介した記事での対応も福祉事務所の非があり、生活保護の申請を拒んだこと自体は大問題になります。
ただ、紹介した記事の問題点はそれだけで、本件の扶養照会拒否の申出書を受け取ったからと言って福祉事務所がどうしなければならないということは無いです。別に「申出書を受け取り、普通に扶養照会をする。そして生活保護の可否を判断する」でよかったわけです。
だってこんな申立書、申告者がこうだと主張しているだけですし、真偽がどうかだって保証されているわけではありません。申立書を出したとしても、それはあくまで一つの参考意見です。
以上、扶養照会についての現行ルールの紹介でした。
本音を言ってしまいますが、私も生活保護を利用した経験のある側の人間です。つまり、扶養照会の恥よりも、生活保護を利用するメリットを取った側の人間です。なので、恥ずかしい思いをして生活保護を利用するくらいなら苦しむ方が良い、ほど親族に生活保護を知られたくないという気持ちは全くありません。
扶養照会の話をしましたが、扶養照会についてそこまで嫌悪感を抱いていません。親族からの評価なんて割とどうでも良いですし。生活保護の要件に当てはまるようになったら扶養照会とか気にせず普通に申請します。
そもそも、恥ずかしいから扶養照会を拒む方は、生活保護を利用することになったら生活どうしてるのとかどう説明するのかなあと思ったりします。
という私の個人的な意見はさておき、扶養照会がそれなりに嫌な方も多くいらっしゃるかと思います。
扶養照会が気になる方は記事のように、申立書などを相当な理由を付けて出しておくと、扶養照会をされない可能性がそれなりに上がるので、出してみれば良いんじゃないでしょうか。申立書もあくまで参考意見の1つになるので、扶養照会実施の判断は申請者との面談結果も参考にされます。記事では申請者が福祉事務所に突っかかるような言動で書かれていますが、こんな言動をしたら「この人気になるから扶養照会して裏をとってみよう」となっても全く不思議はありません。面談では突っかからずに、扶養が期待できない理由を淡々と述べるほうが、成功率は高いんじゃないかなと思います。
※最終的には福祉事務所の判断となるので、扶養照会されないという保証はしません。