生活保護での生活

生活保護世帯からでも大学・専門学校進学はできる

現在、高校卒業後に進学する割合は70%を超えています。その状況でも、生活保護世帯の高校生までの方は、そもそも生活保護世帯だからと大学等への進学をあきらめてはいないでしょうか?本当は進学したいのに、気持ちを抑えてはいないでしょうか?今回は生活保護受給者世帯から大学等へ進学することのお話しです。

目次
・生活保護世帯の進学率
・世帯分離
・奨学金と授業料免除
・ポイントはケースワーカーとの話し合い
・進学した方が良い人
・進学しない方が良い人
・進学を応援する地方自治体の広報
・まとめ

〇生活保護世帯の進学率

厚生労働省の統計調査によると、生活保護世帯の子どもの大学等(「大学等」には大学の他、短大・専修学校、各種学校を含みます)への進学率は35.3%です。全体の70%と比較すると少ない数字ではありますが、3人に1人は進学しています。決して低い数字ではなく、生活保護世帯から大学等へ進学することは夢ではなく現実的なことだとわかります。

参考:厚生労働省生活保護世帯出身の大学生等の生活実態の調査・研究等一式報告書

この数字を逆にしてみますね。生活保護世帯以外の『進学しない割合』は30%です。生活保護世帯の『進学しない割合は』65%です。一般的な家庭と比べて進学しない割合が高んだな、くらいの感想にならないでしょうか?


要は「生活保護世帯だから進学をあきらめる」ということは考えなくて良いということです。但し、生活保護世帯が進学するには『生活保護世帯なりのやり方』があることも事実です。これをしっかり頭に入れましょう。

〇世帯分離

建前上は、生活保護世帯から大学に進学することは認められていません。進学するなら働けるのではないか?ということで、生活保護を受給する以上は働くことが優先されます。それを回避する方法が世帯分離です。

さて、世帯分離の説明ですが、同じ場所に住んでいても特定の人だけを生活保護の対象として扱うことです。例えば40歳の母親、78歳の祖母、18歳の長男、15歳の長女が一緒に暮らしていたとします。生活保護は世帯単位で行われるため、この4人を対象とするのですが、例えば18歳の長男が別の世帯になれば生活保護の対象からは外れます。他にも逆に、介護が必要になった者だけを生活保護の対象にする世帯分離もあります。

ですので、大学進学する者は世帯分離して生活保護の受給から外れ、バイトや奨学金でやりくりして生活することになります。もし実家で生活しても生計上一人で生きていくことになります。この世帯分離をすることで、奨学金を借りたり給付されても、それを収入とみなされ生活保護費から引かれる…などということがありません。そもそも生計上は一人で生活していて、生活保護受給者でも何でもなくなるからです。

さらに2018年に、大学等への進学のために世帯分離をしても生活保護上での住宅扶助(家賃の支援)は減額されないように改められました。※生活扶助は減額されます。加えて自宅から進学する人には10万円、引っ越しなどをして通学する人には30万円の、進学準備金も支給されるようになっています。

生活保護のシステム上でも、大学等に進学することは想定されているということです。仕組みをしっかり理解して、遠慮なく進学しましょう。

〇奨学金と授業料免除

2017年度からは、給付型奨学金(返還しなくて良い奨学金)の支給が始まりました。さらに、2020年からは給付型奨学金の対象や支給額が拡充されています。

2020年度の給付型奨学金のシステムを説明します。給付型奨学金を貰うための条件は、学力と世帯所得です。世帯所得は、生活保護世帯ならまずあてはまるはずです。学力基準は、高校の成績が5段階評価で3.5以上です。学習意欲のある人にとっては、そんなに高いハードルではないと思います。大学進学後に申請する際には、また別の評価になります。

日本学生支援機構:給付型奨学金の選考について

但し給付型奨学金額は、生活保護世帯から国公立へ自宅通学する場合で3.3万円、私立へ自宅通学する場合で4.2万円です。貰えるだけ非常にありがたいのですが、この金額では不十分かと思います。貸与型の奨学金と組み合わせたり、アルバイトをして補うことが必要になります。

ですが2020年から、給付型奨学金の要件を満たせば、授業料や入学金の免除も減免の措置をしてもらえます。国公立ならほぼ負担なしで、私立でも割と少ない負担になります。ですので、奨学金は学費というよりは、アルバイトに多くの時間を割かないための生活費に回るかと思います。

大学等の独自の入学金や授業料の減免措置も多くあります。生活保護世帯、貧困世帯が大学等に進学するための仕組みはちゃんと整っています。

ということで、お金のことは非常に大事ですが、なんとかなるための仕組みが出来ています。お金を理由に進学を断念するのはよく検討してからでも遅くありません。生活保護世帯から大学等へ進学を考えるなら、お金よりむしろ学力を心配すべきです。

〇ポイントはケースワーカーとの話し合い

生活保護世帯は生活の状況をケースワーカーへ伝えますね。将来進学したいのか、就職したいのかも、同じようにしっかりと伝えましょう。

進学に伴う世帯分離や、生活保護制度の支援金など、進学のためにケースワーカーを通して行うことは多くあります。必ずケースワーカーに進学希望だと伝え、しっかり動いていただきましょう。大学等に納める入学手続き金など、期限がシビアなものもあります。世帯分離を行うタイミング等、よくよく話し合って不利益の無いように動いてください。

また、進学準備給付金や奨学金などの制度があるとはいえ、進学に向けた貯金もしなければなりません。進学を通して自立する目的があれば、貯金もある程度認められます。これもケースワーカーへ相談しておいた方が、余計なトラブルを避けられます。

中には生活保護なのに大学等へ進学するなんて…という難色を示すケースワーカー様もいるかもしれませんが、関係ありません。進学に反対するケースワーカー様の考えも様々です。現在の生活保護受給者世帯の進学率を知らず、「そういうもの」と思っているだけかもしれません。就職して貰って家庭にお金を入れさせ、さっさと世帯の生活保護を抜け出させたいために、進学の選択肢を潰したいのかもしれません。当事者の学力や性格を知ったうえで本気で考え、進学しても無駄になりそうなのでやめた方が良いと冷静に思っているのかもしれません。

考えるだけ無駄なので、ケースワーカー様へ意見されても話半分で聞き、自分が進学したいか就職したいかどうしたいかで決めましょう。但し後述しますが、進学か就職どっちが良いかは自分なりに本気で考えるべきです。

〇進学した方が良い人

生活保護世帯でも制度上は進学できます。ですが、全員進学するべきとも思っていません。当然ながら、進学した方が良い人、進学しない方が良い人がいます。

やりたいことが明確ながらも、「生活保護で貧乏だから進学しない」という方がいます。その選択をすれば「生活保護で貧乏だから進学できなかった」というコンプレックスをずっと抱えることになります。そのコンプレックスと下手したら一生付き合う覚悟はありますか? 私はここまでの説明で「生活保護で貧乏だから進学しない」 というのはやり方を知らないだけだと思っています。

但し、それなりの学力(進学先で授業料免除や特待生枠に入れる学力)があることが前提です。特待生枠に入るためには、進学先はいわゆるFランク大学でも構いません。

そもそもで給付型奨学金を利用して、授業料も減免ないし免除されるかと思います。ですが、国公立ならともかく、私立ならまだお金がかかるかもしれません。それでも私立大学、専門学校の特待生枠を利用できれば、はっきり言って金銭的な問題はほぼ解決されます。※医学部など、お金がかかるうえに免除基準(優秀な生徒が集まる中で成績上位を維持すること)が難しいものはあります。

大学等の進学は、お金が無くても学力があればある程度なんとかなる世界です。これをしっかり頭に入れてください。

一応奨学金を借り、バイトをすることで、授業料免除にならなくてもなんとかやっていけるかもしれません。しかし生活保護世帯で育ったなら、私立大学等で数十万円単位の授業料免除を受けられる意義は、非常に大きいことはわかるはずです。バイトはバイトするための時間が必要ですし、奨学金にも限度があります。数十万円を稼ぐための時間で他に何が出来るでしょうか?貸与型の奨学金はどうやって返済する予定でしょうか?

進学した後のことを考えると、可能な限り授業料を安くできるように、まずは授業料免除や特待生枠を狙っていきましょう。その上で、万一特待生枠などを満たせなくなった時の保険として、奨学金を用意しておけば良いです。

ということで、それなりの学力がありしっかりと進学目的があれば、進学した方が良いと思います。逆にそれなりの学力が無ければ、進学したい気持ちはその程度の気持ちということで、進学は見送った方が良いです。

〇進学しなくて良い人

せっかく大学等に進学してもフリーター、果てにはニートになる人もいます。

大学を卒業して就職するもすぐに辞め、第二新卒もすぐに辞め、しばらくニートやフリーターをした人は誰でしょう?

そう、わたしです。

フリーターやニートは高卒でも専門卒でも大卒でも関係ないですね。それなら高卒でフリーターをした方が、授業料というお金がかからないだけマシですよね。
大学等は入学金や授業料だけでなく、教科書代や試験検定代などもあります。大学の教科書は1冊3000円を超えるものも普通にあります。

生活保護受給者の進学は綺麗ごとではありません。自分は進学したとして、その後の就職で時間やお金を取り返せるでしょうか?私は生活保護ではありませんでしたが、結構な貧困家庭で生まれ育ちました。進学しても、それに見合った就職をしていないので、高卒でもよかったなと思っています。進学した方が得か、しない方が得か、損得見極めて決めましょう。その上で、特に進学してやりたいことが無ければ素直に就職するのも選択肢として有りです。

高卒でも優良な勤め先は少ないながらあります。大手企業や公務員の高校生枠です。大卒で中小企業に就職するより、生涯賃金が多くなる場合もあります。高校卒業で生涯年収2億円に届く就職先が決まっているなら、素直に就職した方が良いかもしれません。

勉強することはさておき、キャンパスライフを夢見て進学を希望する人がいます。さらにはやりたいことが無く、とりあえず働きたくないから進学する人もいます。やりたいことが無いから『とりあえず』進学するのはあまり勧められません。生活保護世帯出身者は大学等に進学すれば、家計的に独り立ちしてお金を管理することになります。遊び半分に出来ることではないため、遊びのために進学するのは止めるべきです。

もっとも、生活保護世帯で育った方は、そんな気楽な感情を持ち合わせていないかと思いますが。一般家庭で親が納得していればそんなふざけた進学理由でも良いですが、生活保護世帯で進学するなら前向きな動機が欲しいところです。

〇進学を応援する地方自治体からの広報

もし、こちらをお読みのあなたが中高生、または中高生のお子さんがいらっしゃる保護者の方でしたら、堺市がまとめた「ココから!」という広報小冊子をご一読してみてください。

堺市ホームページ:生活保護世帯の中高生向け未来応援BOOK「ココから!」を作成しました

中高生向け未来応援BOOK(PDFの内容が表示されます)

これからどう将来を設計していくか、参考になるかと思います。少し前に作成されたため、2020年11月時点では給付型奨学金についての記載が足りないのが残念ですが、進学するためにどういう手段があるかがしっかりまとまっています。

あくまで高校卒業後に進学する選択肢もあり、就職する選択肢もあるというスタンスで、高校卒業後に就職することを強制していません。堺市が発行しているので、一部は堺市独自の事情・記述になります。

〇まとめ

以上、生活保護世帯から大学等へ進学することのお話しでした。生活保護でない家庭から進学するよりは大変ですが、出来ないこともありません。生活保護世帯から大学等へ進学するための方法はちゃんと用意されています。はじめから進学は無理だと決めつける必要はないので、しっかり検討しましょう。

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